■デジタルBOOK■「小公女」

商品名 : ■デジタルBOOK■「小公女」

価格 : 700円 (税込 756円)

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監訳者のことば
 監訳者のことば 「小公女 〜リトル・プリンセス〜」

 少年少女名作全集の類には必ずと言ってよいほど名を連ねる「小公女」。映画やテレビアニメでもおなじみの、児童文学の名作です。それだけに既訳書は数知れず出版されているのですが、実は子ども向けの簡略版が多く、現在入手可能な「完全訳」となると意外に少ないのです。そこで今回のワークショップでは、子どもだけではなく大人も楽しめる小説としての「小公女・完全訳」を作り上げようと考えました。本書にちりばめられたセーラの言葉や数々の挿話には、含蓄に富んだものがたくさんあります。逆境の中での生きる前向きな姿勢、他者への理解、自己抑制、希望、思いやりの心。セーラから学ぶことがたくさん見つかります。このような挿話は、簡略版では割愛されることも多いのですが、それらを余すところなく楽しめるのが「完全訳」の魅力です。児童文学の枠を越え、味わい深い大人の作品としても読んでいただけるでしょう。

 新訳としてどのような独自性を持たせることができるか、という点では大いに悩みました。完全訳として、現在最も入手しやすいのは新潮文庫版(伊藤整訳)ですが、角川文庫版(川端康成・野上彰訳)などもあります。文豪の手がけた名訳ですので、われわれではとうてい足元にも及びませんが、唯一目をつけたところが、いずれも昭和三〇年前後に出版されたものであるために、やや古い言葉や言い回しが残っているという点でした。そこで、一九世紀末イギリスの女子寄宿学校の雰囲気をまもりつつも、現代のティーンエイジャーが読んでも違和感のない文章に仕上げることに専心しました。

 また今回の訳で目新しいのは、冒頭に著者自身による序文が収録されていることです。わずか二ページの短いものですが、本書成立のいきさつや、著者が創作活動に取り組むときの姿勢などもうかがえて、興味深い内容になっています。

 著者フランシス・ホジソン・バーネットは一八四九年英国に生まれ、十代のころにアメリカに移り住みました。やがてバーネット医師と結婚、二人の息子に恵まれます。一八八六年、息子をモデルにした初めての児童長編文学「小公子」がベストセラーになり、以後、子ども向け作品を手がけるようになります。翌年、「小公女」のベースとなる「セーラ・クルーの物語(Sara Crew, or what happened at Miss Minchin's)」を発表。直後に、不仲が続いていた夫バーネット氏と別れてイギリスに渡り、以後二五年間、アメリカとヨーロッパを行き来する生活を続けるようになります。一九〇二年に「セーラ・クルーの物語」を自ら脚本化した「小公女(A Little Princess)」が上演され、好評を博しました。そしてそれを小説化したのが、この「小公女」なのです。

 もともとが戯曲であっただけに、本書の登場人物は実に生き生きと、個性豊かに描かれています。アニメや絵本の挿絵の印象が強いと、少々意外に思われるところもあるかもしれません。たとえばセーラは意志が強く、けっこう熱血漢でかっとなりやすいところもあります。空想家で、子どもらしからぬ落ち着きをそなえ、いつも奇妙な発想で大人たちを戸惑わせる発言をする「風変わりな少女」なのです。外見も、ひょろりと背が高く、黒髪に灰緑色の目、「美しいというのではないが、いつまでも見ていたくなるような」不思議な魅力がある、と書かれています。

 こんな主人公の脇を固めるのが、実利的で冷酷なミンチン先生、ほのぼのとした「癒し系」のアーメンガード、屋根裏部屋の日々を支えてくれた心優しいベッキー、物語の最後になって大爆発する「うすのろ」のミス・アメリア。その他、なぜか絵本ではいつも初老の男性として描かれてしまう「インドの紳士」(セーラの父の同級生なのだからまだ若いはず)、意地悪なラヴィニア、ネズミのメルキセデク、インド人召使いのラム・ダスや彼が連れているサルに至るまで、緻密で魅力あふれる人物描写を楽しんでください。

 なお、タイトルについてひとこと。「小公女」というタイトルはよく知っているが、「公女」って何だろうとお思いになりませんでしたか? 「公女」は貴族の家のお嬢さまを指す言葉ですが、最近ではほとんど使われません。既訳書では本文中にも「あのお嬢さまは公女さまなのです」などといった表現が頻出しますが、やや古くさい印象になってしまうと考え、本訳では「princess」に「プリンセス」という「今どきの子どもらしい言葉」をあてることにしました。新訳という位置づけもあり、タイトルも「リトル・プリンセス」とすべきかと悩みましたが、やはり「小公女」という名は老若男女を問わずあまりに広く浸透しているので、これはそのまま使い、サブタイトル的に「〜リトル・プリンセス〜」とつけた次第です。

 本書の翻訳にはDover Juvenile Classicsの「A Little Princess (unabridged)」を用いました。これは一九〇五年の初版本をできる限り忠実に再現したもので、古い文法などもそのまま残されています。そのため、現在Web上で公開されているテキストやPenguin版とは、わずかですが一部異なる箇所もあるようです。

 児童文学ながら、息の長いイギリス文学らしい文章で、監訳作業も簡単ではありませんでしたが、四名の方が素晴らしい力作を寄せてくださったこともあり、こうしてなんとかまとめ上げることができました。訳者の方々には心より深く感謝申し上げます。



《主人公Saraに自分を重ね合わせた人も多いのでは「小公女」》
原題  :A Little Princes
著者  :Frances Hodgson Burnett  1849-1924          
共訳者:近藤恵子、滝宮ルリ、西川真弓、渡部美喜子       
監訳  :稲田智子

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